ぼくのらいおん日記

ハートフルでピースフル、それでいて泣けるエントリーがここに。

「客引き」との上手い付き合い方

先日深夜に繁華街を徘徊していると、どうしてもたくさんの客引きがいるエリアを通らざるを得ない状況に直面した。少し酔っていたので、食い止しのアイスに群がる蟻のように群がってくる彼ら一人一人と、お店に行く気もないのに「へぇ〜そうなんですね。どんなサービスがあるんですか?」だとか、「お兄さんはおいくつなんですか?出身は?今どこに住んでいるんですか?」などといったプライベートな質問を投げかけたりしていると、気さくな彼らはどんどんボールを投げ返してくれるので、思いのほか(一時的、ほんとうに一時的だが)楽しい時間を過ごせた。

 

彼らの多くは若く、聞けば20代前半から30代前半くらい、夕方18:00くらいから早朝にかけて路上にたち、強引すぎない程度にお客を店に誘い込む。店は普通の居酒屋もあるし、もちろん実入りの良い風俗関係が圧倒的に多い。どうも、この仕事をせざるをえなくてしている訳ではなく、まあそこそこ稼げるし、自分たちも風俗で遊ぶことが大好きだからやっているんだよ、と欲望渦巻くギラギラした街に似合わない純粋な笑顔で語ってくれるのが清々しくて、こちらも楽しくなる訳である。しかしあちらも仕事、こっちに行く気が無いと、その会話に費やした時間はひどく無駄なものになるので、ダラダラと話した後で、帰ります、というと多少、引きつった顔で(話し疲れたのかもしれないが)解放してくれる。こちらが趣味や興味本位でベラベラと話している間、彼らは客を逃し、お金を逃し、もしかしたらノルマノルマとホワイトカラーの住人のように怒られているのかもしれない。

 

若い客引きのほかに、少数ではあるが40をこえた客引きがいる。もしかすると彼らは激しい客引き競争社会を生き延びてきた客引き界のレジェンド的な存在なのかもしれない。彼らが客を引く時は独特の空気を作り上げる。若手政治家よろしく、声をおおきく元気ハツラツに若さと回転の速いしゃべりで勝負する若手客引きたちとは異なり、いつまでも穏やかで囁きかけてくるような客引き術を駆使する。そこには、(怪しそうな風貌とは裏腹に)この人の紹介してくれるお店なら安心だという、初対面にもかかわらないのに「信頼感」を醸し出すのがうまい。それが戦術なのか(それが戦術だったら実社会と一緒で「異界」らしさがなくあまり面白くないが)、多くの「客」と出会い、話す中で構築されていったものかはわからない。

 

そうした客引きとやりとりをする際、彼らを「客引き」とひとくくりにして接してはならない。ここで、客引きとは自分とは別の空間で生きている気のいいお兄ちゃんおじちゃんたちという認識を改めて、「接客業従事者」と再認識する必要がある。繁華街にいく私たち客は、どこか気分が高揚していたり、お酒を呑んでいて酔っぱらっている。そんななかで話しかけてくる彼らに対して、どこか雑にあつかったりからかったりバカにしたりと、周囲を見渡すだけでそんな光景が多々見られる。前述したように、彼らは客を引いてくることが仕事であり、そのために労力を使う。もちろん客引きが大量にいるエリアで引く訳なので、なかなか入れることができない場合が多いだろう。そんな彼らをからかうような行為は、時として彼らの怒りを買う。血の気の多い若い客引きならなおさら、暴力事件にハッテンすることだってある。客引きを邪険に扱う前に、こうしたことを考えなければならない。「お客様は神様」ではないのだ。

 

 

 

ということを客引きのおじさんに教えてもらいました(というか怒られました)。からかってごめんなさい、まがさしたんです、お酒も入っていたし、みんなノリがいいんだもん……。この繁華街近くの交番の前を通ると、「昨日の死者 1人」「昨日の負傷者 109人」と書いてある看板を見て、少しぞっとしたのを覚えています。